前回は、なぜブラキシズムのメカニズムについて説明しました。
今回は、歯ぎしりをはじめとする「ブラキシズム」で起きることのまとめです。
ブラキシズムは人間が生きていく上で重要な役割を持っています。
その反面、歯やその他の組織に悪い影響を及ぼすこともあります。
ブラキシズムは、放置するとさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
ブラキシズムによる弊害
1. 歯の摩耗と損傷
歯ぎしりによって、歯の表面が削れててしまいます。
特に、歯の表面のエナメル質がすり減ります。
これを歯の磨耗(まもう)と呼んでいます。
エナメル質は歯の外側にある人体で最も硬い層ですが、一度損傷すると再生しません。
摩耗が進行すると、以下の問題が発生します。
- 歯の感度が高まる:エナメル質より深いところにある象牙質が露出し、冷たいものや熱いもの、酸っぱいものや甘いものに対して過敏になります。
- 歯の形状が変わる:歯が削れた分、歯の高さが低くなり、咬み合わせに問題が生じる可能性があります。
- 歯のひび割れや破損:過度の圧力で歯が割れたり欠けたりすることがあり、修復にはクラウンやインプラントなどの治療が必要になることもあります。
2. 顎関節症(アゴの関節に現れる症状)
歯ぎしりが長期間続くと、顎の関節や筋肉に負担がかかり、顎関節症(顎関節障害)を引き起こすリスクが高まります。
顎関節症の症状には次のようなものがあります。
- アゴの痛み:寝ている間に強い力がアゴの関節にかかり、特に朝起きたときに顎の筋肉や関節が痛むことがあります。
- アゴの音:口を開け閉めする際にカチカチ、カクカクという音が鳴ることがあります。
- アゴの可動域制限:口を開けるのが難しくなったり、口を開けるときに痛みを伴うことがあります。
- 首や肩の痛み:アゴの周囲の筋肉の緊張が首や肩に伝わり、慢性的な首や肩の痛みの原因となることがあります。特に、朝起きたときに顎や顔の筋肉がこわばっている、疲れていると感じることがよくあります。
- 頭痛:ブラキシズムより、アゴの筋肉に長時間強い負担をかけていると、アゴの筋肉と繋がっている側頭部の筋肉などが疲労して緊張型の頭痛が生じることがあります。首や肩の痛みと同様、朝起きたときに感じることもあります。
3. 歯茎や歯周組織へのダメージ
ブラキシズムの影響は歯そのものだけでなく、歯茎や周囲の組織にも及びます。
強い噛み締めや摩擦によって、歯のそのものだけでなく、その歯周の組織に以下の問題が発生します。
- 歯茎の後退:歯が揺らされることによって歯に圧力がかかりすぎると、歯茎が下がったり、歯根が露出してしまいます。
- 歯の揺れや抜け:非常に強い圧力がかかると、過度に歯が揺らされます。最悪の場合、歯を失うことがあります。
4. 睡眠の質の低下
ブラキシズム(特にグラインディング型、いわゆる歯ぎしり)は本人だけでなく、同室で寝ている人にとっても睡眠の妨げになる場合があります。
歯を強く擦り合わせる音が大きくなると、同居人の睡眠を邪魔し、いびきと同様に睡眠障害を引き起こすことがあります。
また、歯ぎしりそのものが原因で、本人の睡眠の質も悪化する場合があり、疲れが取れにくくなります。