受け口(反対咬合)をワイヤーで治療した歯列矯正についてです。
治療開始時、11歳でした。
受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療
受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療の例を、正面から全体像を見てみましょう。
正面のようす
噛んだ状態で、下の前歯は上の前歯を覆って先端が隠れています。
受け口(反対咬合)にも色々な状態があります。
噛んだ時に、下の歯が上の歯を覆っていなくて、上下の歯が離れている場合もあります。
この場合は、いわゆる開咬という咬み合わせを伴った状態です。
今回のケースは、噛んだ時に深めに噛み込んでいて、開咬という状態ではありませんでした。
横から見たようす
下の歯は、前から数えて3番目(犬歯)までが、上の歯を覆っています。
上の歯は、前から数えて2番目の歯(側切歯)までが、下の歯に覆われています。
また、上下の奥歯の位置も、本来の理想的な位置ではありません。
山と谷が噛み合う状態が理想的です。
また、理想的な咬み合わせは、全ての上の歯が下の歯を覆う状態です。
そもそも歯の形は、上が下を覆うことを前提として形作られています。
その状態になって初めて、機能的に歯を使うことができるようになっています。
反対咬合の治療は、見た目の改善はもちろんですが、機能面の回復の目標も非常に大切なことです。
受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療の経過
では、受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療の経過を見てみましょう。
上の歯のブラケットの装着
上の歯にブラケットをつけました。
ブラケットをつける位置は、それぞれの歯に対して何ミリといったように教科書的なルールがあります。
しかし、下の歯が上の歯を噛み込んでいる場合、上の歯につけたブラケットが下の歯の先端とぶつからないように付ける必要があります。
そのため、やや教科書的な位置からズラしてつけなければならないことがあります。
今回は、上の前歯の先端よりわずかに歯ぐき側につけることにしました。
このような場合、後々入れるワイヤーへの調整の仕方も同時に予測しておかなければなりません。
下の歯のブラケットの装着
下の歯にもブラケットをつけました。
下の歯は矯正治療が進むと、上の歯に覆われる側になります。
そのため、歯の先端近くにブラケットをつけてしまうと、今度は上の歯の先端で下の歯のブラケットを噛んでしまうことになりかねません。
治療の途中や治療完了時の状態を予測しておくことは、とても大切です。
顎間ゴムの使用
反対咬合の状態ではありますが、歯の並び自体はキレイでした。
このような場合、早い段階で反対咬合を改善するステージに移行できます。
上の歯には比較的硬めのワイヤーを入れ、下の歯には複雑な形のマルチループワイヤーを使用しました。
マルチループワイヤーが使用方法には、非常に多くバリエーションがあります。
その中でも今回は特に、前傾している奥歯を一斉に起こすという特徴を利用しています。
そもそも反対咬合になっている原因は何かというと、
下の歯が前の方にある(前の方に倒れてきてしまっている)のが一つの原因です。
ですので、の歯を固定の元として、下の歯を後ろへ引いていくためにマルチループを使用しています。
ただし、ワイヤーを入れただけでは歯は動いてくれません。
同時に顎間ゴムを使用することが、非常に大切です。
反対咬合が改善する
前回の調整から、わずか1ヶ月で反対咬合が改善しました。
前歯は、上の歯が下の歯を覆う形になっています。
これは、一斉に下の奥歯が奥へと動いてくれたからです。
顎間ゴムの使用が、非常に効果的に現れました。
ブラケットやワイヤーは自分で外すことのできない装置ですが、顎間ゴムは自分でつけなければなりません。
毎日数回取り替えなければならない、とても根気のいる作業です。
11歳の患者さんは、顎間ゴムを自分で取り替えるルールをきっちり守りました。
目標をしっかり見据えた立派な努力家です。
しかし、これで終わりではありません。
上下の奥歯の位置関係を、山と谷が合うように導かなければなりません。
そのため、マルチループの調整の仕方と顎間ゴムの使い方を変えていきました。
奥歯の咬み合わせを整える
調整の仕方を変えて、徐々に奥歯の位置も変わってきました。
ここまでくると、前歯の反対咬合の状態も安定してきます。
上の歯には、さらに硬いワイヤーを入れて歯列の安定を図ります。
下のマルチループワイヤーには、奥歯がきっちり噛み合うような調整を加えます。
このステージにおいても、顎間ゴムの使用は必須です。
最後のワイヤー
上下の奥歯の位置も、噛み合う場所に落ち着いてきました。
ワイヤーもシンプルな形に変えています。
下の歯には、今まで入れていたマルチループの調整の仕方を踏襲するようなワイヤーの調整を施しています。
歯列と咬み合わせの安定を見届けます。
受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療が完了
しばらく硬いワイヤーを使って、調整と安定を図り、全ての歯の装置を外しました。
上の歯が下の歯を覆い、お食事もしやすい咬み合わせになっています。
正面から見ても、とてもきれいな歯列になりました。
保定装置(リテーナー)の着用
矯正治療後は、その状態をキープするための保定装置(リテーナー)を着用します。
リテーナーはご自身で外すことのできる装置です。
矯正治療後の一定期間、終日着用を心がけていただきます。
装置自体は外せるので、ブラケットの時のような歯磨きのしにくさもなくなります。
受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療のまとめ
以上、受け口(反対咬合)小学生のワイヤー矯正治療の経具体的な方法と過程、終了後の結果について、詳しくお伝えしました。
反対咬合の治療は、反対咬合の成り立ちをよく理解することで治療を進めることが大切です。
また、身体の成長に伴う下顎の骨の成長も、観察していく必要があります。
八重歯と前歯が重なっている歯列矯正の治療の経過の様子は、YouTubeでもご覧いただけます。
八重歯と前歯が正しく並んでいく様子がよくわかりますよ↓
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