ブラキシズム(歯ぎしり)は、主に無意識に行われる行為です。
クレンチング(噛みしめ)は日中にしている方も多いのですが、ブラキシズムは睡眠中にしていることが多いです。
前号で、ブラキシズムの3つの種類に分類しました。
ブラキシズムをするメカニズムは複雑であり、いくつかの要因が関与しています。
以下に、ブラキシズムが発生するメカニズムについて詳しく説明します。
ブラキシズムのメカニズム
1. 神経系の影響
ブラキシズムの多くは、脳と神経系の活動に関連しています。
特に睡眠中、脳は完全に休んでいるわけではなく、さまざまな段階の活動を繰り返しています。
この脳の活動と、体の筋肉や神経の反応がブラキシズムに結びついています。
- 睡眠時の覚醒反応
浅い眠りの段階で脳が一時的に覚醒すると、神経系が活性化します。この際に、アゴの筋肉が収縮し、上下の歯が噛み合うように筋肉が働くとブラキシズムが発生します。
- 中枢神経系の異常
中枢神経系の異常や過剰な興奮がブラキシズムの原因となる可能性があるとされています。特に、ストレスや不安、精神的な緊張が強いと、神経系が過度に活動し、ブラキシズムが引き起こされることがあります。
2. 筋肉の作用
ブラキシズムはアゴの筋肉、特に咬筋(こうきん)側頭筋(そくとうきん)の強い収縮によって起こります。
これらの筋肉は噛む動作を担当していますが、無意識のうちに過剰に働くと、歯を強く噛み締めたり、擦り合わせる動作が発生します。
- 随意筋と不随意筋の働き
咬筋や側頭筋は、食事や会話などの意識的な動作(随意運動)に加え、睡眠中などの無意識の動作(不随意運動)にも関与しています。睡眠中のブラキシズムは、この不随意運動の一環で起こるとされています。これらの筋肉が自律神経系の指示を受けて過度に活動することで、ブラキシズムが引き起こされます。
- 筋肉疲労と反射反応
筋肉が過度に疲労している場合、体がその筋肉をリラックスさせようと反射的に動かすことがあります。この無意識の反応が、ブラキシズムの引き金になることがあります。
3. ストレスと心理的要因
ブラキシズムは、特にストレスや不安が高い状況で悪化する傾向があります。心理的な負担がかかると、体はそれを解消しようとさまざまな反応を示します。
- ストレス反応としてのブラキシズム
ストレスを感じると、交感神経が活性化され、筋肉が緊張しやすくなります。これにより、噛みしめや食いしばりが起こりやすくなります。
- 感情の抑圧と解放
感情的な緊張を無意識に抑圧している場合、睡眠中にその解放が行われ、ブラキシズムがその一部として現れることがあります。これを、心身のバランスを保つための一種の防御反応と見ることができます。
4. 咬み合わせや歯の位置の問題
ブラキシズムは、咬み合わせや歯の不正な位置によって引き起こされることもあります。
歯の位置が正しくないと、咬筋や側頭筋に過剰な負担がかかり、その結果としてブラキシズムが生じることがあります。
- 不正咬合
不正咬合(上下の歯の咬み合わせが悪い状態)があると、ブラキシズムが起こりやすくなると言われています。特に、奥歯の高さが異常な場合や、歯並びが不均等な場合は、噛み合わせを補正しようとする動きがブラキシズムにつながることがあります。
- 補綴物や矯正装置の影響
義歯や矯正装置が噛み合わせに悪影響を与えている場合、無意識にそのズレを補正しようとする動作がブラキシズムを引き起こすことがあります。
5. 遺伝的要因
ブラキシズムには遺伝的な要因も関与している可能性があります。家族にブラキシズムをする人がいる場合、ブラキシズムが遺伝的に引き継がれることがあるといわれています。
遺伝的要因により、アゴの筋肉の緊張や神経の過敏性が高まり、ブラキシズムが引き起こされる可能性があります。
6. 薬物やその他の要因
覚醒剤や一部の抗うつ薬、抗不安薬は神経系に影響を与え、ブラキシズムを引き起こす要因になると言われています。
また、カフェインやアルコールの過剰摂取もブラキシズムを悪化させる原因となることが知られています。
以上、ブラキシズムの原因となりうることを列挙しました。
次号では、ブラキシズムによって起こる悪影響について考えてみましょう。